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- 投稿 2017/03/31
- 大仁田厚
プロレス界に常に話題を撒き散らしていった
問題児? 邪道、大仁田厚。
「邪道」という異名は誰が言い出したか分からないけれど、
これ程ピッタリとイメージにどハマりしてるのも或る意味凄い!
まさしく邪道というその呼び名に相応しいプロレス道を歩んだ、
大仁田厚の引退試合には不肖中村、生観戦に足を運んだ。
もはや何度引退と復帰を繰り返しているか分からない大仁田厚。
ここで取り上げているのはWARの天龍源一郎に敗れ、
1年間の引退ツアーを行った後、川崎球場で
弟子のハヤブサを相手に行った引退試合の事だ。
この引退試合というのも、当時大仁田厚と二人三脚で
時には憎まれ役になりながらもFMWを支えてきた
ターザン後藤の電撃離脱の直後。
元々ターザン後藤を相手に引退試合を
行う予定だったが、そのターザン後藤らの離脱により
急遽対戦相手は変更されハヤブサになったのだった。
大仁田厚引退試合
世界ブラスナックル選手権試合
ノーロープ有刺鉄線金網電流爆破時限爆弾デスマッチ
今思えばハヤブサにとっても酷な話だ。
それまでメキシコで空中殺法に磨きをかけていたにも関わらず、
帰国第一線が電流爆破とは・・・。
この試合とマッチメイクに対する裏話的な事は色々とある様だが、
そこを深掘りするのは当記事の趣旨とは違うので進めていこう。
さて、川崎球場は何せ屋外球場なので
メインイベントに至る頃は日もとっぷりと暮れている。
当時の中村少年はそれこそ中学1年生か2年生にして
川崎参戦していたし、今の様に便利なインターネットやスマホも無い。
親が書いてくれたメモ紙を頼りに
「登戸ってトコで乗り換え!」
これだけを頼りに辿り着き、観戦、
そしてメインイベント前の電流爆破設営準備の時間を利用して
母親の用意してくれたウインナーとおにぎりの弁当をハフハフと食べながら
試合開始を待ったものだ。
さて、すっかり日の落ちた川崎球場は
既にお目当の大仁田厚引退試合を前に
ボルテージマックス!!
何せ当時のFMWといえば選手層は薄く
お客さんを呼べる様な人気レスラーは数える程しないかった。
前座の試合はまさに「前座の試合」であり
メインイベントの輝きを奪い取る程の
実力と魅力を兼ね備えたレスラーが実際なかなかいなかった。
勿論、これはプロレス特有の
第1試合からメインイベントまでの「流れ」も
興行として考えられていたのだと思うが・・・。
そしてこういっては他の選手には申し訳ないが
言葉を選ばず言えばこの日の観客は殆どが
大仁田厚の引退試合「のみ」を目的に来場していて、
それ故、後半に向けた会場の期待値の高まり方は異様だった。
遂に始まるメインイベント。荒井リングアナの名調子が復活!
大仁田厚引退試合に限り、限定で
それまでFMWの名物リングアナアンサーとして知られた
荒井昌一アナが復活し前口上を披露してくれた。
とは言っても、中村はそれまでFMWを生で観戦した事はなかったから、
そのプレミアム感は分からなかったが・・・。
(荒井アナは後に自殺をされてしまう・・・とても残念だ。)
実際試合開始してからは独特の展開が続く。
デスマッチ形式の試合はロープがない事で
試合の組み立てに大きな影響を与える!
この独特のスリリングな展開がたまらない。
あの特殊な環境、スタンドでもグラウンドでも
観客は周りに電流爆破が張り巡らされている事を
否応無しに意識せざるを得ない。
片時も忘れる事は出来ないのだ。
そんな中で中の2人が、
あたかも周りの電流爆破の存在を忘れたかの様な
動きをする時にはハラハラドキドキしっぱなしである。
そして遂に訪れる電流爆破、その瞬間!!
ババン!!
この電流爆破の衝撃はヤバイ!!
ただ音がして火花が飛び散るだけではないのだ。
遠く離れたスタンドの観客席にまで
その衝撃は空気の振動となって伝わってくる。
腹にズシン!と響くのだ。
これは花火のイメージをしてもらいたい。
川崎球場の中心からスタンド席までも
電流爆破の光、爆発、そして振動が時差で届くのだ。
これの衝撃は見た者にしか分からないだろう。
電流爆破デスマッチは当然「週刊プロレス」などの
誌上でも振り返る事が出来るしビデオでも発売されている。
しかし、後からテレビでみた所でこの腹に響く空気の振動や、
風に吹かれて飛んでくる独特の火薬のニオイなどは感じる事が出来ない。
この電流爆破デスマッチは正に
生で観戦して良かったと思えた試合である。
この衝撃に観客席は騒然。
よくプロレスをショーだの八百長だのと
言う輩がいるが、そういった輩に向けて大仁田が言うセリフ
「じゃあアンタ、この俺の流している血もニセモノだっていうのかい?」
というこの言葉が正に突き刺さる瞬間だ。
とにかくあの瞬間、あの会場に白けた人間は誰もいなく、
ただただ全員が度肝を抜かれている瞬間なのである。
そんな衝撃の電流爆破が幾度か訪れた後、
時限爆弾の起動スイッチが押され警告音が鳴り響く!!
この警告音、サイレンの様なものだが
何故こんなにも人を不安に陥れるのかと思う程、これまたドハマりである。
最後まで緊張感が抜けない!
一瞬たりとも目が離せない!
そして時限爆弾の爆発・・・!!
ババン!!
凄まじい爆発音と共にその日最大級の衝撃がまた
このスタンド席まで刺さる様にとどろき渡った。
ハヤブサの金網上からのムーンサルトなど感動のシーンも訪れ
最後は大仁田のサンダーファイヤーパワーポム。
白煙の立ち込める中3カウントが数えられる、もの凄い激闘であった。
この引退試合以降、大仁田がリングからいなくなった
新生FMWは大仁田時代のデスマッチ・ストリートファイトカラーを消し、
正統派レスリング志向に転換するなどデスマッチの機会は極端に少なくなった。
後々もIWAジャパンや大日本プロレスなどが
デスマッチを行なっていたがやはり「電流爆破」ではない。
この大仁田の専売特許である「電流爆破デスマッチ」
これを生でみた衝撃は今も忘れず心に残っているのである。